彼女が僕の中にいる第十一話.僕は君を小一時間は責め立てたい(avant) |
雪兎ぐらい完璧に整髪している人は、学校では少数だ。だから教室に入ってクラスメイトに姿を見られると、露骨に反応された。いつも机に顔を伏せていたような生徒がイメチェンしたら、クラスメイトたちの認識にズレが生じるので仕方がない。いつも通り雪兎の席に座って隣の子と喋る姫宮さんも、「おっ」と声をあげて笑った。 「ユッキー髪おしゃれー。めっちゃ綺麗にセットしてるじゃない。急にどうしたの? てかなんで今までそうしなかったのよ」 自分の外見をよくする方法を友達に教えてもらったのだと素直に答えた。うんうんと姫宮さんは頷く。 「全っ然そっちの方がいいから。シャツのボタンもきっちり締めるんじゃなくてさ、上三つくらいガラッと開けなよ、その髪型で襟まで締めるのはダサすぎるって」 雪兎は素直にボタンを開き、はだけさせた。わお、と笑いつつ反応する姫宮さん。 「ユッキーセクシーすぎる。あとはシャツをズボンから出して」 それをやると先生に見つかったとき口うるさくいわれるが、今はウケを狙って応じる雪兎であった。彼女はまた盛大に笑う。 「あんたほんっと最高だわ、この一ヶ月で変わりすぎでしょ。イケメンのオーラ出てるよ。ねぇ?」 姫宮さんが友達に同意を求めると、彼女たちは笑いながら頷いていた。 「てかさりげなく眉毛もいじってるし」更に笑う姫宮さん。「あー、ユッキーってほんと楽しい人だね」 雪兎は気取るように、左手の指をL字に口の下に当てる。すると彼女たちはげらげらと笑うのであった。雪兎は内心、席で顔を伏せていた望海が気にかかっていたが、そちらは見ないように意識していた。 |
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