2 隣の部屋から、お母さんの喘ぎ声。 ぼくはぷよに没頭する。 「……え?」 ぼくは、ぷよをしている。 ふすまに目を向けた。じっと見つめる。 そのうち、お母さんの喘ぎ声がなくなって、上半身裸の男が出てきた。 「お、帰ってたか」 ふすまの向こうで服を着るお母さん。 「またこれやってんのか」 男がぼくの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。 ぼくはぽかんと口を開けて、タケシを見ていた。 「どした?」 「さっき、ぼくを殴った。数えきれないくらい」 「はあ? いまお前の顔見たばっかだろ、コラッ」 タケシがぼくを蹴る。何度も足を振った。ぼくは身を丸くして耐えた。 「ちょっとやめてあげてよ」 服を着終えたお母さんが、タケシを止めた。 「悪い……やりすぎた」 タケシはお母さんに抱きついて、ごめん。お母さんはタケシを撫でる。 「実を言うと、またちょっと金が必要なんだ……貸してくれないかな」 「えー! もぉ、いくらなの」 「いくらでもいい」 お母さんは渋々、財布から一万を出す。ぼくは小声で呟いた。 「ありがとう、ユウミがいてくれてオレは幸せだよ」 「ありがとう。ユウミがいてくれて、俺は幸せだよ」 台詞が一致した。 金を受け取って、タケシはさっさと帰る。ぼくはお母さんを見つめた。 「アルくんどうしたの?」 「……夢を見てたのかな」 「どういうこと?」 「正夢の話、前に教えてくれたでしょ」 ロトが当たる夢を見たお母さんは、それを正夢だと言って、夢で見た数字を買った。見事に全部はずれだけれど。 さきほどのお母さんとタケシのやりとりが、夢の状況とまったく同じだったことを話した。 「不思議な夢見たんだねえ。アルくん、その夢、なんかお金儲けに繋がりそうなことなかったかなぁ?」 すぐにロトのことが思い浮かんだ。 「お母さん、ロト7を買ってた。それで当選数字、お母さんが買った数字から全部一つずれててね、驚いてたよ」 「へー。前にずれてたの? それとも後?」 「たしか、お母さんの買った数字の、一つ後にずれた数字が、当選数字」 「お母さんの買った、数字の、一つ、後。それ本当にたしか?」 「と思うけど。心配なら三つ買ったら? お母さんの考えた数字と、全部前にずれた数字と、全部後にずれた数字」 「うわぁ、アルくん頭いい! 天才!」 お母さんはぼくを抱きしめて、たくさん撫でる。やめてよお母さん、と鬱陶しがったけれど、嬉しかった。 ネットでロト7の抽選結果を見るお母さん。ぼくはぷよをしていた。 「……うそ。うそうそうそうそー!」 ゲームを停止する。お母さんの傍に駆け寄った。 「見てよアルくん! ほら!」 お母さんの持つクジは4、7、12、14、19、21、35。モニターに映る数字は4、7、12、14、19、21、35。 「アルくんの言った通り買ったら、全部一致したの! 信じられない……」 お母さんの目に涙がこみあげる。大きく手を広げて、ぼくに抱きついた。 「十億よ! 億万長者よ! あぁ、愛してるわアルト!」 「よかったね、お母さん。これでお仕事辞められる。もっと良い家に住める」 「うんうん、住める。三人で幸せになろ」 バッとお母さんから離れた。「三人?」 「え、三人でしょ? 私と、アルくんと、タケシ。ほら三人だ」 「あいつはダメだ! あいつに見つからないところに行こう。大金手に入れたことを知られたら、一生お母さんに金を要求して、全部奪われちゃうよ」 「だ、だいじょうぶよ……」 「お金があれば、もっといい人と結婚できる! あいつはぼくに暴力ふるうんだよ? お願い、もうあいつとは会わないで」 お母さんは悲しげな目で、ぼくを見つめた。その目が、諦めたように伏せた。 「わかった……。あーあ、最高に私好みの顔だったんだけどなぁ」 「かっこよくても頭がイカれてるよ」 お母さんは不満そうに口を尖らせた。 「でも、いいの? タケシに見つからないように逃げるってことは、この街を離れちゃうんだよ? 万実ちゃんと離れ離れだよ」 「あ……」すっかり考えていなかった。 「あー、やっぱ万実ちゃんのこと好きなんでしょ?」 「違うよ! ほんとにそんなんじゃないんだって。別にいいよ、離れ離れでも。会えなくなるわけじゃない」 お母さんはにやにや笑う。「会いにくるつもりなんだ」 余計なことを言うとつけこまれるので、もうぼくは黙った。 お母さんはネットで買いたいものを漁りはじめた。ずっと鼻歌を歌っていた。 「おじいちゃん、おばあちゃん、行ってくるね!」 玄関を開けると、万実がちょうど出てきた。万実のおじいちゃんとおばあちゃんは、ニコニコして手を振っている。ぼくは頭を下げた。 「有飛おはよう。はいこれ。今日もどうせ持つんでしょ」 万実は赤いランドセルを掲げる。ぼくは無言でランドセルを持った。 「どうしたのよ、なんか元気ないよ?」 「なんでもないって」 ぼくは階段を下りていく。 「いつもランドセル持ってくれてありがと」 ぼくはなにも言わず、階段を下りつづけた。 万実は鼻歌を歌いながら、楽しそうに通学路を歩く。 「あ、ねえねえ、明後日――」 「七夕祭りにぼくを誘うんだろ」 「え、すごい、よくわかったね。有飛って時々、勘が鋭いよね」 えへへ、と万実は笑った。 「悪いんだけど、ぼくは行かないよ」 「はあ?」 「お前友達いるんだし、そいつらと行けよ」 「なんでそんな言い方するの! 有飛に友達いないから一緒に行ってあげようかなって思ったのに!」 「余計なお節介は迷惑だ」 ムムムムッ、と万実は大声をあげた。 「ランドセル、返して! あたしも有飛のお節介、イヤ!」 「これはぼくのトレーニングのためだ、返さない」 ぼくは走りだした。バカ、と何度も叫ぶ万実を笑いながら。 校門前にリムジンが止まる。純が降りた。いってらっしゃい、と車の中の男の声。いってきます、と純。 リムジンが離れると、近くにいた女子が純の周りに集まった。 「おはよ、純」 「おはよう。えっと、永井有飛くんだ」 「うん。毎日すっげー車で送ってきてもらって、うらやましいな」 「ボクは歩いて登校したいんだけどね。パパが危ないからだめだって」 「金持ちで誘拐されるかもしれないから、とか?」 「その通り。ウチの親は心配性なんだよ」 「ふーん。でも、金持ちだしさ、不自由ないだろ。デカイ家に住めるし、なんでもほしいもん手に入る。いいよな、金があるって」 万実が肘で突いた。「バカ、失礼なことばっかり言って」 「たしかに、お金で買えるものはたいがい手に入るけど……。ボクはいずれパパの仕事を継がなきゃいけないし、毎日勉強や色んなレッスンで忙しくて、自由がない。そのせいでどこにも行けないんだよ」 まるでぼくに説教をする言い方に聞こえた。嫌な感じがした、というわけではない。ガキっぽいことを言った自分を恥じた。 「金持ちでも辛いことがあるんだな」 純はふっと笑みを浮かべた。 「永井くん、優しいね」 「え? ぼく、なんかやさしいことした?」 万実と純がなぜか見合う。すると、万実はぼくと純を交互に見て、目を泳がせた。 「あ、そうだ!」唐突に手を叩く万実。「純くん、明後日の七夕祭り、一緒に行こう。有飛と行く予定だったんだけど」 「行かないって、ぼくは」 「純くんも一緒に」万実は純の手を掴んだ。「ね?」 「悪いけど、パパが許さないから無理だよ」 「かもだけど、一応聞いてよ。もしかしたら許可もらえるかも」 「でも……」 ぼくは万実と純の手を無理やり離した。 「純が困ってるだろ。行きたくないやつを無理に誘うのやめろ、お節介」 「あー、もうそういう言い方ほんとひっどい!」 「待って、ボク、行きたくないわけじゃない。お祭り、一度も行ったことないし……聞いてみる。パパが許してくれたら行くよ」 うわーいやったー、と万実は無邪気に手をあげて喜んだ。 「ボクが行けたら、永井くんも来てね」 「えー、うーん……しょうがないな」 「ちょっとちょっと、なんで純くんの誘いは受けて、付き合いの長い私の誘いは拒むのよ!」 万実はぼくの肩をばちん、と叩く。 「いったいなあ。ほら、ランドセル」 万実に返して、ぼくはさっさと教室に向かった。 下校中、万実はしつこく言っていた。明後日の七時、大宮神社。迎えにいく、と。 ……まったく同じだ。やっぱり正夢なんかじゃない。 あれは本当に起こったできごとなんだ。 「ねえ、今日の有飛、なんかヘン」 万実に話そうか迷った。話しても、信じられないか。 「ぼく、この街を離れるよ」 「え、どういうこと?」 「実はロト7が当たってね、大金が手に入ったんだ。ぼく、タイムリープしてるんだよ。それでロトの抽選結果を知ってたんだ。億万長者だよ。お母さんの交際相手の話、前にしたろ? あいつ嫌いだし、あいつから逃げたいし、それもあって、もっと良いところに住むつもりなんだ」 万実はじっとぼくを見ている。やがてぼくから赤いランドセルを取りあげて、 「次に会ったときはまともな会話をお願いね。じゃなかったらもう絶交だから」 小さく手を振り、走っていった。 家に帰ると、お母さんがいて、スーツケースにいろいろ詰めていた。 「アルくんおかえりぃ。アルくんのスーツケースも買ったから、必要なもの詰めて」 「どういうこと?」 「どういうこと、って、家を出るのよ」 「待って、聞いてない。早いよ」 「今日換金に行ってね、お金もらうまでに時間かかるみたいなんだけど、本当に十億が手に入るって、現実味が増してね、そしたらこんな汚い団地からすぐおさらばしたくなったの」 まだ住む先は決まっておらず、とりあえずホテル暮らしする、とお母さんはウキウキしながら言った。 万実には引っ越すことを手短に話したけれど、ぼくの冗談だと思ってまともに聞いてくれなかった。 ホテルから学校に通うことを想像したのだが、隣の県に移ってしまい、ぼくの学校はどうするのと聞くと、すっかり忘れてた、とお母さんは言った。 学校に行かないまま夏休みになって、莫大な当選金額が手に入り、海が見える立派な家を買った。ぼくの転入先も決まり、九月の始業式から新しい学校に通った。すぐに友達ができて、ようやく自分の居場所が見つかった気がした。 万実には手紙を出した。電車でこられるから、いつでも遊びにこいよ、と。 インターホンが鳴る。 ゲームを中断して、スマホで、カメラに映る人物を確認すると、ぼくは駆け足で玄関まで行き、鍵を開けた。 「久しぶり」 「ひ、久しぶりね」戸惑う万実。 「本当に来るとはな」 「なによ、電話でこの日って話したじゃない」 「まあ入れよ」 万実はきょろきょろ室内を眺めるので、面白かった。 「信じられないわ。すごく立派な家……ロトが当たったって話、本当だったのね」 「ああ。何度も言うけど、ロトのこと誰にも言うなよ」 「しつこい、喋ってないよ」 「電車代いくらかかった? 往復の分を渡すよ」 万実は顔の前で手を振る。「いらない」 「金はあるから、もらっとけよ」 「いい。あたしを甘やかさないで、ほいほい受け取りそうで怖いから」 ぼくはふっと笑った。万実はリビングへ進む。広さに驚いた。三階の展望室から海が見える、と話すと、万実は急いで階段をあがり、海を眺め、うっとりしていた。 「そういえば、おばさんいないね」 「出かけてる。詳しことはわからんけど、金を持ったからには土地を転がさなきゃ、とかなんとかよく言ってるから、それでどっか行ったと思う」 「ふぅん」 「とりあえずゲームするか?」 「後でね。もうちょっと、ここにいたい」 椅子に座って、二人でしばらく海を眺めながら話した。だいたいお互いの学校の話だった。 「久しぶりなのに、有飛、全然普通だね」 「どういうことだよ」 「だって、ほとんど毎日顔合わせてたんだよ。それが突然いなくなってさ……」 「お、もしかして万実、さみしかったか?」 「ち、ちがう!」 真っ赤な顔をした万実がぼくをばんばん叩く。やめろよ、と言ってもやめてくれない。ばんばんの音に、泣き声がまじった。万実が泣いている。 「え、お前、なんで泣いてるの」 「……ほんとはちがくない」 「え」 「だって、いきなりいなくなって、ランドセル、毎日重くて……これいつも持ってくれてたんだって……」 「しょうがないだろ、ぼくは引っ越したんだし。毎朝電車でお前の家行ってランドセル持ちたいけど、難しいじゃん」 ぶんぶんと首を振る万実。 「あたし、有飛が好き」 「……はい?」 「有飛が好きなの! 友達の好きじゃなくて、これは告白の好きよ!」 「お前、それ、いきなりすぎだろ」 「いきなりじゃない、有飛が鈍感なだけ!」 万実は大泣きをはじめた。 「ずっと好きだった! でも、有飛、いつもそっけないし――急にいなくなったら、もっと好きになったの!」 「お、落ちつけよ……」 ぴたりとやむ泣き声。万実は顔をぼくの間近に寄せた。 「返事は?!」 「え……」 「私の告白をどう受けるかの返事よ! にぶちん!」 「いや、突然言われても」 「なによ、あんたは私のこと、なんとも思ってなかったわけ? 毎日私の荷物持ってくれて……私が好きだから持ってくれたんじゃないの?!」 「んなわけないだろ! ぼくはただ、自分のトレーニングのためにだな」 「照れ隠しでそう言ってたんじゃないの……?」 「え、うん」 万実は大泣きを再開。 「有飛のばかああああああ!」 走りだして、階段を下りていった。追いかけると、万実は玄関に向かってしまう。 「おいおい、帰っちゃうのかよ!」 万実は出ていった。 「なんだよ、あいつ……」 さっさとゲームに戻った。 遊んでいると、ぼんやり昔のことを思いだす―― ほとんど毎朝顔を合わせる万実。はじめは仲良くなかった。小学一年から三年の一学期までは、顔を合わせていながらも、一言も会話しなかった。 小三の二学期。十月に入った頃。ぼくはひどい風邪をひいた。お母さんはいなくて、孤独だった。このまま死ぬと思った。 朦朧としていると、インターホンが鳴った。起き上がるのは辛かったけれど、死ぬ前に誰かに会っておきたかったんだ。たとえセールスの人でも。 玄関を開けると、万実だった。学校のプリントを届けに来たと言った。 ぼくは笑顔で、「ありがとう」と言った。嬉しかったから。 すると万実は急にぼくの額に手を押しつけて、すごく熱があると知ると、血相を変えてぼくを布団まで引っ張って寝かせ、自分の家から氷枕を持ってきて、それから万実の祖母とおかゆを作ってきてくれた。万実は母さんが帰ってくるまで、ずっと傍にいてくれた。 ぼくが元気になり、朝、顔を合わせると、「体調はどう?」と万実は聞いた。ぼくはすっかり良くなったことを証明しようと、万実の荷物を全部持った。 それから、ずっと、万実の荷物を持ちつづけた。特別な感情はなかった。そのはずだった。 でも……。 万実に「好き」と言われて、どきどきしている。 万実は携帯を持っていないけれど、電話はできるし、会えなくなったわけじゃないから、さみしいと思わなかった。でも、もし会えなくなったら。嫌だ。 嫌なんだ、ぼくは。 「告白か」 付き合う、がどういうものか、いまいちわからない。でも、万実にもう一度好きだと言われたい。次に会ったら、言ってくれるかな。そうしたら、ぼくは―― ピンポン。 インターホンの音。反射的に立ち上がっていた。玄関へ駆けだして、扉を開けた。 立っていたのは、万実じゃなかった。 「よぉ、アル坊」 タケシだった。 息がつまった。少し、呼吸できなかった。 「水くせえじゃねえか、こっそりこんな豪邸に引っ越すなんてよ」 「どうしてこの場所が……」 タケシがぼくに迫る。足が震えて動けなかった。 ドアがガチャンと閉まる。 「嬢ちゃんをつけてきたんだよ」 万実がばらしたのかと、ぼくは一瞬疑っていた。そうじゃなくてよかった。疑った自分を責めた。 タケシがぼくの首を掴んだ。「なんで俺から逃げた? こんな家に引っ越したってことは、めちゃ金回りよくなったんだよな? 金づるつかまえたか? あの年増が金持ちの愛人になれるとは思わねえけど。あいつ脱ぐ仕事は絶対しないって言ってたけど、ついに風俗に落ちたか? まあそれくらいじゃこんな豪邸無理か」 黙っていると、タケシはぼくを殴った。 「なんか答えろよ。俺は心が広いから、別に今回のことは許してやるから」 殴る。蹴る。その繰り返し。 「俺がどんなに辛い思いしたか、わかるか? 急にお前らいなくなってよ、そりゃショックだったよ。見つけたら殺してやろうかってくらいに。思うだけで絶対にやらないけどな。俺たち、家族だろ?」 そう言って、殴る。 「なあおい、金の出どころはどこだって聞いてんだよ!」 押し飛ばされ、ぼくは床に転げた。タケシはため息をつく。 「いいよ、もう。今日じっくりママをいたぶって吐かせるから」 悪魔のように笑うタケシ。 「うわああああああ!」 ぼくは叫び、立ち向かった。大人の力にかなうはずないのに。殴り飛ばされ、タケシはぼくを踏みつけた。何回も、踏みつけた。ひどく苦しかった。 ガチャン。ドアが開く音。 「有飛!」 万実の声。万実はタケシに立ち向かった。なにもできず、捕まった。 「お前……なんで戻ってきた!」 「なんでって、あのまま帰りたくなかったからよ。それより、なんでこの人がいるの」 「嬢ちゃんには礼を言わないとな。俺を案内してくれてありがとう」 「ついてきてたのね……ごめん、あたしのせいで」 「万実は悪くない――おい、万実を離せよ!」 タケシが舌なめずりをする。 「年増のママもそろそろ飽きてきたなあ。嬢ちゃんにいたずらしてみるか」 タケシの手が、万実の唇を撫でる。万実は悲鳴をあげた。その声が、ぼくを奮い立たせた。タケシに突撃した。万実を掴む腕に、噛みついた。 「いってええええええ!」 万実も、ぼくのマネをしてタケシの腕を噛んだ。タケシは絶叫して、万実を思いきり殴り飛ばした。 「万実!」 駆け寄って、顔に触れた。目を開けてくれない。 「このやろおおおおおお!」 タケシに体当たりする。まるでびくともしなかった。殴り飛ばされ、また体当たり。蹴り飛ばされ、また体当たり。 意識がある限り、タケシに立ち向かった。足腰が立たなくなっても、腕で這いずってタケシに向かった。 「殺してやる、殺してやる!」 そう声をあげつづけた。 タケシは、そんなぼくをあざ笑っていた。 |
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